「神様の居酒屋お伊勢~〆はアオサの味噌汁で~」(梨木れいあ)を読みました

神様の居酒屋お伊勢~〆はアオサの味噌汁で~

この巻で、「神様の居酒屋お伊勢」シリーズは完結するってことを作者さんのTwitterで知って、忘れずに買わなきゃと思いつつ、発売日は日本にいないじゃんってことで、台湾を旅行中に注文して、帰国したらポストに届いてるテイで買って、既に読み終わっていたんですが、感想を書けずにズルズルしておりました。

仕事に恵まれなかった莉子が伊勢の神々導きで、おはらい町で新しい世界を拓く……みたいなストーリーで、若い男の店で住み込みで……ときたら、そりゃ期待するでしょ!男と女のナントヤラ。

そう思って、前巻からそのカホリだけは漂わせていたところで、完結巻ときたら、そりゃまぁ期待するじゃないですか?!ねぇ~。

まぁ、それがどうなったかは、読んでみてのお楽しみということで、今回も伊勢の美味いものをテーマにストーリーは進んでいくのです。
その中でピックアップしたいのは、「へんば餅」とサブタイトルにもなっている「アオサの味噌汁」。

伊勢市駅前のへんばや

「へんば餅」は、今では、毎年の伊勢神宮参拝のスタート、外宮側の伊勢市駅を降りて、参道を歩き始めたすぐにある店で、腹ごしらえで食べるアイテムです。元々はもう少し手前の本店ぐらいでしか売ってなかったのですが、店を増やしたようですね。

本店は、昔仕事で名古屋方面では有名な駄菓子メーカーに行くときに通りがかったことはあるのですが、さすがに食べることは出来ず……。

へんば餅

へんば餅は、こしあんを薄皮な餅で包み、表面を焼いたという素朴なお菓子です。

たいてい1,2個をペロリと食べてしまうアイテムなのですが、欠点は賞味期限があまりに短く、お土産にし辛いところ。私の勤め先にもこれが好きな社員が居るのですが、賞味期限のおかげで、なかなかお土産に出来ないというオチ。このあたりは、作品の中でもチラリと出てきます。

ちなみに、へんば餅でも赤福でもそうなんですが、お茶はほうじ茶がお約束のように出てきます。なぜか合うんですよね、これが。

そして、「アオサ」味噌汁だけではないのですが、地元のスーパーでも感想アオサが当たり前のように売ってます。一部回転寿司でも出て来るのですが、アオサの味噌汁が放つ海の香りは一度気に入ると、ワカメよりアオサなんて気分になります。
ただ、アオサってけっこうお値段がするのですが、三重のローカルスーパーではなかなかお値打ちに買うことができます。私の場合は、鳥羽の漁協のマーケットで買うことが多いです。

さて、そろそろ今年も終わって、新しい年がやってきて、また、例年の伊勢神宮参拝の時期となるわけです。本作の記憶を思い出しつつ、いつものように伊勢の神々をお参りすることといたしましょう。

ちなみに、伊勢路宮の内宮でちょっと気に入っているのが、「風日祈宮」。御正宮へのルートから、ちょっと川を挟んだ向こう側にある別宮です。
ルートを外れて足を進めると、それまでの喧噪が一転、なんとも言えない静寂に包まれます。この違和感というのが、神域の面白さとも感じて、必ず訪れる場所です。

あぁ、シナのおっちゃん、なんかキャラにシンパシーを感じるなぁと思ってたら、さもありなんかなとか一人勝手に思い込んでしまいました。

あと、「流しそうめん」のエピソードがあったのですが、以前、行きつけの居酒屋でこれを店内で繰り広げるというのがありました。竹を割って、店内に……です。やっぱり流しそうめんは外が良いなって改めて思いました。

たまたまスーパーの本屋でピンときて手にして全4巻、毎回楽しく読めて、伊勢の神々のエピソードと美味し国のアレコレ。毎年のお伊勢参りがちょっと楽しくなったのは間違い無いかもですね。あぁ、終わっちゃうのか~という思いはありますが、梨木さんの次回作を楽しみにしたいなーと思った次第です。

「きみに届け。はじまりの歌」(沖田円)を読みました

ええっと、この本を買ったのは一昨年の年末、つまり本が出たばかりに買ったらしいです。
なのに、読了が昨日……。我ながら積ん読遅読を突っ走ってます。その1年の間に数冊小説が通り過ぎたというのは黙っておきます。

作品の舞台は、愛知県安城市。県民としては地域的な空気感が分かって面白いのですが、そんな街の高校の部活の廃部問題から始まる高校生の夢と現実、どうにもならない外部環境の変化と圧力。自分にもそんな時代があったなぁと振り返りすらしました。音楽と写真は違えど同じアートの世界。

芸術でメシは食えない

そう言われた当時の自分は、楽しいことは仕事にしない。と、決めたことを覚えてます。多分今も気持ちは変わらず。アートの世界に居たら、もしかしたら、あの伯父のようになっていたのかなとか思ったりもします。

さて、物語は高校生のカンナと、大人でプロミュージシャンのナナセのストーリーが交錯します。その二人を結びつけるのはメッセージアプリ。交換するお互いが分からない。悩みを吐露し、それに応える。そんな展開が話をつないでいきます。

しかし、物語の最後、その二人の関係にあれ?と。
時空超えたSF感のある展開?そんな印象すら感じさせる展開に。

夢と現実、あるべき論とありたい論、安定した未来と不安定な未来、そして「自分らしさ」。

そんな青春時代、もしくは大人になっても、常に訪れる人生の葛藤、そんなことを考えさせられる作品でありました。

--名古屋から安城の手前に向かう普通電車で車窓を眺めながら。

「大須裏路地おかまい帖~あやかし長屋は食べざかり~」(神凪唐州)を読みました

名古屋市中区大須、新しいものと古いもの、日本のものと外国のものが激しく交錯し、東京なら中野を思わせるようなサブカルタウン。
そんな街の中で、人と妖怪(あやかし)が繰り広げる人情?妖情?ドラマ、それが「大須裏路地おかまい帖~あやかし長屋は食べざかり~」。

1年ほど前に読み終えた「異世界駅舎の喫茶店」、作者Swind氏が神凪唐州と名を改めての、書き下ろし作品。
前回があまりの分厚さに面食らって読み出すのに数ヶ月、読み終えたのは1年後。そんな積ん読の定番をやらかしたのですが、今回は、1ヶ月ほどでライトに読了。

ただ、挿絵が無く、話からイメージを妄想するのに激しく苦しむのです。
異世界駅舎から(猫とか)脳内召喚されたり、作者のTwitterのタイムラインの写真から召喚されたりと、リアルなのは大須の景色と、舞台となった居酒屋「なご屋」の想定イメージぐらいでしょうか。

さて、ザックリ言ってしまうと、

  • 特殊な才能を持った町の小さな神社の神主兼居酒屋の雇われ店長が、あるとき妙な猫を拾うが、それは幼い怪だった。そして同居する。
  • 「なご屋」に集う人とおやかしのおかしな日常と騒ぎに振り回されつつ巻き込まれつつ。
  • あるとき家でして戻って来ない幼い怪の猫、ひょんなことからこの世に現われた理由が解き明かされると共に、救出大作戦が始まる。

大須は妖怪だらけという新たな解釈と想像から、この作品が紡がれてきたらしいのですが、なんだろう…あぁ、まぁ、そうね…と、思わず頷いてしまうから、大須というのは、何とも変な、それでいてそこはかとない魅力を感じさせる町で飽きが来ないわけです。
時空がシームレスに繋がる混沌感、大須にはなんかそんな妙なものはたしかに感じるのです。

そして、今回もやっぱり食い物。舞台が名古屋で作者が名古屋めし研究家なもんだから、やたら名古屋めしが出て来るわけで。さすがに地元の自分にはありふれた内容で驚きもしないのですが、その中でもと問われたら、油揚げに刻みネギと味噌だれを混ぜたものを入れてトースターで焼いたもの。
名古屋めしというにはいささか異論が出そうだけど、酒の肴には持ってこい。

酒呑み的には、朱音が冷蔵庫から引っ張り出す酒あれこれ、銘柄描写もしてくれれば良いのになどと、少々消化不良気味になります。

名古屋、大須を知る人には、また遊びに行ってみたくなる、小説風の謎解きガイドブック、そんなイメージになるでしょうか。
そうで無い人にはどんな印象になるかは分かりませんが、もし行きたくなったとしたら、作者的には大成功なのかもしれません。

ただ、作中にも紹介される、鶏の唐揚げの上にあんことホイップクリームが乗ったアイテムは、後悔はしたく無ければ、手を出さないことです。

挿絵が無いと書きましたが、この作品はコミックでは無く、絵本としてビジュアル化して欲しいなと思います。「大人の絵本」ですね。

さて、読了してしばらく後、ちょっくら聖地巡礼してきました。

こちらが舞台の北野神社。
ホントに小さな神社でよくもまぁここをキーにしたなと、作者のセンスを尊敬します。

ただ、この大須というのは、神社や寺院など大小様々なスポットが大須という街空間に融け込んでおり、

北野神社から数分歩いたところには、別の冨士浅間神社があったりします。
この時は向かいのみちのく屋(の夜営業の日本酒Bar廣瀬)でさぁこれから呑まんとしていたときではありますが、昼間はここでお祭りもあったとか。

大須というのはこんな路地があちこちにあり、ロジマニアには何とも楽しい空間でもあります。

「異世界駅舎の喫茶店」(Swind) を読みました


TVアニメの方では、「異世界食堂」が放映され、ラノベ方面では異世界の食い物屋をテーマにしたような作品がチラホラ。
この作品もそんな中の一つかなと、思っておりますが、作者が知人ということもあり、ご祝儀感覚で買ったのが、1年前。
ラノベなのにあまりの厚さに積ん読されておりましたが、お盆休みの何もすることの無い中、頑張って片付けておりました。

ザックリ言ってしまうと、

  • 主人公夫婦が旅の帰り、いきなり旦那は異世界に飛ばされ、嫁は猫の亜人(子供)に変わってる。
  • 戻るに戻れないし暮らせないので、辿り着いた駅の住み込み駅長代理になって、しかも、喫茶店を始める。
  • あとは、駅周辺で起こる色んな出来事、だいたい何か食べ物を作ってる。

といったお話。

毎回起こるイベントは面白いが、大半が調理シーンに持っていかれるという、何か作って食べてみたいかもと思っていたところに、巻末にレシピが載っているという、都合の良い構成です。人はそれを「飯テロ」と言うらしいです。

ドラスティックな刺激の訪れ無い、のどかな展開の作品ですが、明治期あたりの文明度で平成の料理を供していきます。
そして、ちょいちょい材料関係が異世界感を出すためにスペイン語化されているところは、個人的には読みづらかったです。
異世界・異次元ものの場合は、割とこの手の用語系は、一度は説明する場合もあれば、最初からそういうものとして、スルーしていることの方が多いのかなと思いましたが、本作は、読者に料理の実践を促さんとするせいか、説明が細かいです。

本作が出版されて1年経過し、漫画化され、そして第2作が出版されています。

ということで、夏休みの読書感想文でした。